田中将介

-tanaka masayuki-

フェアトレードのおかしな真実――僕は本当に良いビジネスを探す旅に出た コナー・ウッドマン (著), 松本 裕(訳)

エシカル

 

善意の裏側

 

私たちが良かれと思ってやっていることが、実は、加害者になっている。
もし、そうだとしたら、ぞっとしないだろうか。

 

「フェアトレード」と聞くと絶対的に良いもの、と思われるかもしれない。
そこに待った!をかけたのがこの本である。
イギリスのジャーナリスト、コナー・ウッドマンがフェアトレードの現場を確かめる旅に出た。

 

内容を簡単に紹介しよう。

フェアトレードは不公正な取引なのか

 

フェアトレードの主張は、
「アフリカや中南米で、グローバル企業が
農家のコーヒーやカカオ豆を不当に安く買い叩いている」である。

そのため農家は熱帯雨林を伐採し、それでも生活できず困窮に陥って破産してしまう。
この問題を解決するもっとも有効な方法は、
貧しい国の農家も労働に対する適正な利益が得られるよう、
グローバル企業が「公正な価格」でコーヒーやカカオ豆を購入することだ。

そうすれば農家の経営は安定し、無理な農地拡大も必要なくなり、
自然も人々もサスティナブル(持続可能)になるだろう。

 

これが、私たちの「フェアトレード」の認識だろう。
いや、実は違うのだと。
フェアトレードの不公正な取引が貧しい国の農家をより貧しくしていっているという現実があった。

 

協同組合が現地の有力者に支配され、彼らが人件費や管理費などの名目で農家を搾取する。
しかしフェアトレードは協同組合がないと事業が継続できないため、
こうした不都合な事実に気づいていても目をつぶって放置しているのだという。

 

グローバル企業が貧しい農家を救う

 

 

「フェアトレードのおかしな真実」をめぐる旅でウッドマンが思い知ったのは、
貧困の原因は腐敗した政府であり、権力の崩壊がもたらす内戦や内乱だということだ。
それによってグローバル企業が撤退し、仕事を失った現地のひとびとが経済的な苦境に追い込まれる。

 

コンゴの村の苦難はグローバル企業が生み出したのではなく、
グローバル企業(ベルギーの鉱山開発会社)が撤退したことで始まったのだ。

 

著者はこう結論付ける。
「経済格差の元凶」としてグローバル企業を敵視するのではなく、
彼らのちからを上手に利用した方がずっといいのではないか。
フェアトレードのマークのついたコーヒーを飲んでいるだけでは、
世界はなにひとつ変わらないのだ。

 

 

この一冊が全てのフェアトレードのストーリーを物語っているわけではない。
しかし、「フェアトレード」認証は簡単で、それを利用したブランディングを行う団体もあり、
本質である「貧しい農家」にきちんとした労働対価が支払われているのかということに
疑問がぬぐえないこともありうるのだ。

 

もし、自分でフェアトレードビジネスをやりたい!と考えている人には、おすすめの一冊である。
本当に私のビジネスは問題を解決する手段として適切なのだろうか。
再考できるだろう。

フェアトレードのおかしな真実 概要

 

身近にあふれる「人と地球にやさしい」は本当に世界を良くするのだろうか?

 

もはや手放せないスマートフォンやタブレット型PC、
毎朝のコーヒーや量産されるファッショングッズが紛争や人権侵害のもとに成立しているとしたら……
公正さや社会貢献を認証するはずのラベルが単なる売り文句になっているとしたら……

 

「このコーヒーを飲めば、アフリカの貧しい人が救えます」

「このアクセサリーを買えば、恵まれない子どもたちが学校に通えます」
信じてもいいのだろうか?

 

中国の組み立て工場(主な製品はiPhoneやiPadなど)、
本当の意味を成していない認証ラベル(環境保全やフェアトレードなど)、
死と隣合わせのコンゴの鉱山(その鉱石は私たちのPCやスマートフォンの中にある)。

 

複雑で、簡単には見きれないサプライチェーンに疑問を抱き
世界一周の旅に出たジャーナリストが直面した、誰も知らない驚きの真実。

 

私たちの日常にあふれている商品の見方が、完全に変わるだろう。『インディペンデント』紙

欲深い企業を批判する本は山ほどあるが、
あらゆる現場に足を運び建設的な意見と提案をする本はほかにない。
――ティム・ブッチャー(『デイリー・テレグラフ』紙・元海外特派員、ジャーナリスト)

 

私は、本当にこうした農家の暮らしを改善しているのだろうか?
彼らは本当に有利な取引ができているのだろうか?
特定のコーヒーを買うことでだれかの暮らしを改善することなど、
そもそも可能なのだろうか?

 

再びロゴのことを考え、あのキャッチコピーはひょっとすると
「第三世界の生産者にとって、より有利な取引にしようと試みている」
と言ったほうが正確なのではと思った。
そして、何かが成されているという事実に、
いいことをしたような気になっている自分にも気付いた。

 

―「はじめに」より

ーダイヤモンド社より

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